「ねぇ、それなげて!」
もしあなたが、宮城出身の恋人にプレゼントを渡した直後にこう言われたら、どう思いますか?
「えっ、気に入らなかったの?投げ捨てろってこと?」とショックを受け、最悪の場合、その場で喧嘩別れ……なんてことになりかねません。
でも実は、相手は「(包装紙を)ゴミ箱に捨てて(片付けて)おいて」と頼んだだけだったとしたら?
宮城県の方言(仙台弁)は、その響きの柔らかさから「かわいい」と言われる一方で、標準語と同じ音なのに意味が真逆になる「トラップ」も潜んでいます。言葉のすれ違いで愛を失うなんて、あまりにも「あっぺとっぺ(ちぐはぐ)」な話ですよね。
この記事では、二人の距離をグッと縮める「天使の方言」と、誤解を生む「悪魔の方言」の両面から、宮城弁コミュニケーション術を伝授します。
恋の特効薬!相手の心を掴む「天使の仙台弁」
破壊力抜群!「だっちゃ」はリアル・ラムちゃん?
「~だっちゃ」と聞くと、国民的アニメ『うる星やつら』のラムちゃんを思い浮かべる人が多いでしょう。実はこれ、宮城県(および仙台藩領)では日常的に使われる語尾です。
- 「そうだっちゃ(そうだよ)」
- 「行くっちゃ(行くよ)」
- 「食べるっちゃ?(食べる?)」
ラムちゃんのような電撃的なお仕置きのニュアンスはありません。むしろ、相手への親愛の情や、同意を求める甘えのニュアンスが含まれています。
宮城女子が上目遣いで「んだっちゃ(そうだよね)」と言ったとき、そこには確かな「かわいさ」が存在します。男性が使う場合も、少しお茶目で柔らかい印象を与えます。
最高の褒め言葉「めごい」と言われたら脈アリ
もしパートナーや意中の相手に「○○ちゃんは、めごいごだ(○○ちゃんは、かわいいなぁ)」と言われたら、それは最大級の賛辞です。
「めごい」は「めんこい」と同義で、「愛らしい」「愛着がある」という意味を持ちます。単なる外見の美しさ (Beautiful)というよりは、守ってあげたくなるような愛おしさ (Adorable/Cute)に近いニュアンスです。孫やペットに使われることも多いですが、異性に言われたら脈アリと考えて間違いないでしょう。
「いきなり好き」は、急に好きになったわけじゃない
告白の場面で「いきなり好きだ」と言われたら、「えっ、さっきまで友達だったのに急に?」と戸惑うかもしれません。
しかし、ここで思い出してください。宮城弁の「いきなり」は「突然」ではなく、「とても (Very/Super)」という意味です。
つまり、「いきなり好き」=「大好き」という意味。
「急に」という誤解で、「もう少し時間をかけて考えさせて」なんて返事をしたら、相手は「えっ、大好きなのにダメなの?」と混乱してしまいます。
「いきなり」は急じゃない?恋愛で誤解を招く方言の意味を詳しく知る
デートの誘いは「あばいん」と「やっぺ」で
二人の距離を縮める勧誘フレーズも覚えておきましょう。
- 「あばいん」: 「行きましょう」と「いらっしゃい」の両方の意味があります。
例:「カフェさ、あばいん(カフェに行こうよ)」 - 「やっぺ」: 「~しよう (Let's)」という能動的な誘いです。
例:「一緒にやっぺ(一緒にやろうよ)」
どちらも、相手を自分のテリトリーに温かく招き入れるような響きがあります。
「おらほ」という言葉が示す「二人だけの世界」
「おらほ」は「私たちの方」「私たちの地元」という意味です。楽天イーグルスを「おらほのチーム」と呼ぶように、強い仲間意識や帰属意識を表します。
もし彼氏・彼女が、あなたのことを「おらほの彼女(彼氏)」と友人に紹介したら、それはあなたを「身内(ファミリー)」として完全に認めた証拠です。
別れの危機?喧嘩を招く「悪魔の仙台弁」
【最重要警告】プレゼントを「なげる」大事件
宮城弁における最大のトラップ、それが「投げる(なげる)」=「捨てる」です。
「なげる」と言われたら、ゴミ箱へ。決してスローイングしてはいけません。この違いを知っているだけで、防げる喧嘩が山ほどあります。
彼は怯えてない! 「こわい」と言い出す真の理由
デートの最中、彼が急に「あー、こわい」と言い出しました。
「えっ、私怒ってないよ?何が怖いの?」と不安になる必要はありません。
宮城弁の「こわい」は「疲れた (Tired)」という意味です。
「あー、こわい」は「あー、歩き疲れたなぁ」という、ただの生理現象の報告です。恐怖を感じているわけではないので、「少し休憩する?」と優しく返してあげてください。
「こわい」以外にもある!喧嘩の原因になる要注意方言リストをチェックする
「だから!」の連呼は、喧嘩を売っているわけではない
あなたが話している途中に、相手が食い気味に「だから!」と言ってくることがあります。
「だから何!?言い訳しないで!」と怒ってはいけません。
宮城弁の「だから」は、「その通り!」「完全に同意!」という意味の感嘆詞です。相手はあなたに反論しているのではなく、あなたの意見に激しく首を縦に振っているのです。
無言の圧力? 「むつける」と「ごしゃぐ」の見分け方
相手の機嫌が悪いとき、その状態を正確に見極める必要があります。
- 「むつける」: 拗ねる、ふてくされる。
口を尖らせて黙り込んでいる状態。優しくなだめれば直ります。 - 「ごしゃぐ」: 怒る。
こちらは能動的な怒りです。「ごしゃがれる(怒られる)」前に、素直に謝りましょう。
話が通じない時は「あっぺとっぺ」かも?
会話が噛み合わない時、相手は心の中で「あっぺとっぺだなぁ」と思っているかもしれません。
これは「辻褄が合わない」「とんちんかん」という意味です。
もし「あっぺとっぺなこと言って!」と言われたら、あなたの言っていることが理解されていないサイン。一度深呼吸して、標準語でゆっくり説明し直しましょう。
「いずい」関係にならないための処方箋
「いずい」は「しっくりこない」「違和感がある」状態を指します。服のサイズだけでなく、人間関係にも使われます。
二人の空気が「いずい」と感じたら、それは何かしらのサイン。宮城の人は察することを好みますが、他県民のあなたは言葉にして確認することが大切です。「何かいずいこと(気になること)ある?」と聞いてみるのが解決への第一歩です。
【総括】言葉のズレは、愛で「翻訳」できる
「なげる」で驚き、「だから」でイラッとする。
そんな経験も、方言の意味さえ知っていれば「なんだ、そういうことか!」と笑い話に変わります。
言葉の違いは、文化の違い。相手の「お国言葉」を理解しようとすることは、相手の生まれ育った背景そのものを愛することに他なりません。
次に彼・彼女が「だっちゃ」と言ったら、ぜひ笑顔で「んだ(そうだね)」と返してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 男性の「だっちゃ」は、おかしくないですか?
A. 全くおかしくありません。アニメの影響で女性言葉のイメージが強いですが、宮城では男性も普通に使います。「行くっちゃ(行くぞ)」のように、親しい間柄での意思表示として自然に使われます。
Q2. 「バカ」に当たる宮城弁はありますか?
A. 「ほんでなす(本来無い→愚か者)」や「あんぽんたん」などが使われることがありますが、日常会話で頻出するのは「あっぺとっぺ(とんちんかん)」や「おだづもっこ(お調子者)」といった、少し愛嬌のある言葉が多いです。
Q3. 喧嘩した時に「もう、わんかれ!」と言われました。意味は?
A. 「わんかれ」は「お別れ」の意味です。冗談で言っている可能性もありますが、文脈によっては「別れ話」の可能性もあるので、慎重に対応してください。
Q4. 「おはよう靴下」って何ですか?
A. 靴下の親指部分に穴が空いている状態のことです。もしデートで相手の靴下に穴が空いていても、「おはよう靴下だね!」と笑ってあげれば、気まずい空気も和みます。
Q5. プロポーズに使えそうなかっこいい宮城弁はありますか?
A. 宮城の男性はシャイなので、あまり飾った言葉は使いません。「一生、俺のそばさ居てけさい(一生、俺のそばにいてください)」のように、シンプルに伝えるのが一番響きます。「~けさい(~してください)」は丁寧な表現です。
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