島根旅行の計画中、あるいはテレビで耳にした「だんだん」という温かい響き。それがきっかけで、島根県の方言に興味を持ったあなた。「でも、方言っていっぱいあって難しそう…」と感じていませんか?
実は、島根の方言は知れば知るほど面白い、まるで謎解きのような世界なんです。例えば、出雲地方で「たばこすーかね?」と誘われたら、あなたはどうしますか? もし「タバコは吸わないので…」と断ってしまったら、せっかくの休憩時間を逃してしまうかもしれません。

えっ、そうなんですか!?勘違いしちゃいそう…。
この記事は、そんな誤解しやすくも面白い島根の方言を、クイズ形式で楽しく学べるように作りました。
さあ、あなたはいくつ正解できるでしょうか?一緒に言葉の迷宮に挑戦してみましょう!
【初級編】まずは小手調べ!島根の基本方言クイズ

最初に、島根県の方言の中でも特に有名で、耳にする機会も多い言葉からクイズを出題します。旅先で出会う可能性も高いので、ぜひ覚えておきたい基本問題です。
第1問:感謝を伝える魔法の言葉「だんだん」
記念すべき第1問です。出雲大社の門前町でお土産を買ったところ、お店の人から「べったーべったー、だんだん」と声をかけられました。これは一体どういう意味でしょうか?
- べたべたして、ありがとう
- 別に、どういたしまして
- いつもいつも、ありがとう
正解は「 いつもいつも、ありがとう」です。
「だんだん」は島根県、特に出雲地方を象徴する最も有名な方言で、「ありがとう」を意味します。 ただの感謝ではなく、「いつもいつも」「重ね重ね」といった、より深い感謝の気持ちが込められた温かい言葉です。 「べったーべったー」は「毎回」や「いつも」を強調する表現なので、合わせて「いつも本当にありがとうね」という心のこもったメッセージになります。
第2問:夕暮れの美しい挨拶「ばんじまして」
日が暮れ始め、街に明かりが灯り始める頃。地元の人とすれ違う際に使われる挨拶が「ばんじまして」です。さて、これは標準語で何と言うでしょうか?
- こんばんは
- おやすみなさい
- さようなら
正解は「 こんばんは」です。
「ばんじまして」は、夕方から夜にかけて使われる挨拶言葉です。 「こんばんは」とほぼ同じ意味ですが、「日が暮れて夜になりましたね」という、時間の移ろいを感じさせる風情のある響きが特徴です。この一言を知っているだけで、ぐっと地元に溶け込めるはずです。
第3問:健康を気遣う優しい問いかけ「まめなかね?」
久しぶりに会った知人や、お年寄りに声をかける時によく使われるのが「まめなかね?」というフレーズです。これは相手を気遣う、とても大切な言葉です。
- 豆は食べますか?
- お元気ですか?
- 几帳面な性格ですか?
正解は「 お元気ですか?」です。
ここでの「まめ」は、元気、健康、達者といった意味で使われます。 相手の健康状態を優しく尋ねる、心温まる挨拶です。もしあなたが「まめなかね?」と聞かれたら、「おかげさんで、まめにしてます(おかげさまで、元気にしています)」と返せると、さらに会話が弾むでしょう。
第4問:出雲の気質を映す言葉「おちらと」

カフェで店員さんに「どうぞ、おちらとしてごしない」と言われました。これは、どのような過ごし方を勧めているのでしょうか?
- あちらの席へどうぞ
- 散らかしてください
- ゆっくりしていってね
正解は「 ゆっくりしていってね」です。
「おちらと」は「ゆっくりと、のんびりと」という意味の副詞です。 急がず、焦らず、落ち着いて、というニュアンスを含んでおり、穏やかでのんびりとした出雲地方の人々の気質を象徴するような言葉と言われています。
第5問:助け合いの心「てごする」
あなたが重い荷物を持って困っていると、親切な人が「てごしちゃーわ」と声をかけてくれました。さて、その人は何をしてくれると言っているのでしょうか?
- 手品を見せますよ
- 手伝いますよ
- 手配しますよ
正解は「 手伝いますよ」です。
「てごする」は「手伝う」という意味の方言です。 「~しちゃーわ」は「~しますよ」という申し出の表現なので、合わせて「お手伝いしますよ」となります。困っている人を見たら自然と手を差し伸べる、島根の人の優しさが感じられる言葉です。
第6問:びっくりした時の口癖「おべた」
予期せぬ出来事に遭遇した人が、思わず「まあ、おべた!」と口にしました。これはどんな感情を表しているでしょうか?
- おべっか(お世辞)を言う
- 驚いた、びっくりした
- 疲れた、うんざりした
正解は「 驚いた、びっくりした」です。
「おべた」は、驚いた時に使う感嘆詞です。 ポジティブな驚きにもネガティブな驚きにも使えます。響きが少し可愛らしいのが特徴で、地元のおじいちゃん、おばあちゃんが使っているのを耳にすると、なんだか和やかな気持ちになります。

初級編、クリア!人の温かさが伝わる言葉が多いですね。
第7問:総括・まとめ
初級編、お疲れ様でした。いかがでしたか? 「だんだん」や「まめなかね?」など、人の温かさを感じる言葉が多かったですね。これらの基本的な挨拶や相槌を覚えるだけで、島根でのコミュニケーションが格段に楽しく、そして深くなるはずです。旅の準備運動としては完璧です。次の中級編では、少しトリッキーな問題に挑戦してみましょう。
【中上級編】これは難問!意味を誤解しやすい方言クイズ

ここからは難易度がぐっと上がります。標準語と同じ響きなのに意味が全く違う言葉や、特定の地域でしか使われないディープな方言が登場します。うっかり勘違いしないように、注意して挑戦してください!
第1問:暴力じゃない?「びんた」
友人が「あー、びんたが痛てーわ」と顔をしかめています。さて、友人の身に何が起きたのでしょうか?
- 誰かに平手打ちされた
- 魚の「びんた(キハダマグロの幼魚)」の骨が刺さった
- 頭(側頭部)が痛い
正解は「 頭(側頭部)が痛い」です。
島根の方言で「びんた」は、頬や平手打ちのことではなく、「頭の側面、こめかみから耳の上あたり」を指します。そのため、「びんたが痛い」は「頭痛がする(特に側頭部が)」という意味になります。標準語の感覚で聞くと、事件性を感じてしまうかもしれない、代表的な勘違いしやすい方言です。
第2問:休憩のお誘い?「たばこする」

仕事の合間、出雲出身の同僚が「ちょっと、たばこせんかね?」とあなたを誘ってきました。これはどういう意味でしょう?
- 一緒にタバコを吸いに行かない?
- 一休みしない?
- タバコを買ってこない?
正解は「一休みしない?」です。
出雲地方で「たばこする」は、喫煙の有無にかかわらず「休憩する、一休みする」という意味で広く使われます。 もちろん、タバコを吸いながら休憩する人もいますが、言葉自体は単に「Let's take a break!」のニュアンスです。 なぜこのような意味になったのか、その背景を知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。「なぜ出雲弁の『たばこする』は休憩するという意味なのか、その秘密はこちら」
第3問:サメじゃないの?「わに」

山間のスーパーで、地元のおばあちゃんが「今日はわに料理だわ」と話していました。一体どんな食材を使った料理なのでしょうか?
- 鰐(ワニ)
- 和邇(地名)産の野菜
- 鮫(サメ)
正解は「鮫(サメ)」です。

わに!?って思わず聞き返しちゃいますね!神話が由来だなんて面白いなあ。
驚くかもしれませんが、出雲地方では古くからサメのことを「わに」と呼びます。 これは古事記の「因幡の白兎」の神話で、ウサギを騙して皮を剥いだ動物が「ワニ」と記されていることに由来すると言われています。山間部でサメが食べられるのは、サメ肉に含まれるアンモニア成分が腐敗を防ぐため、かつては貴重なタンパク源として内陸まで運ぶことができたからです。
第4問:転んだだけ?「まくれる」
石見地方出身の友人が、昨日あった出来事を「いやー、昨日道で派手にまくれたわー」と笑いながら話しています。友人はどうなったのでしょうか?
- 服がまくれ上がった
- 騙された
- 転んだ
正解は「 転んだ」です。
「まくれる」は、特に石見地方でよく使われる「転ぶ、転倒する」という意味の方言です。 標準語の「まくれる(めくれてひっくり返る)」と語源は近いのかもしれませんが、意味が少しずれて使われています。ちなみに、石見弁と広島弁はとても似ていますが、その微妙な違いを知ると面白いですよ。「石見弁と広島弁、どこが違う?その境界線を探る旅はこちら」
第5問:驚きの表現「かっ!!」
隠岐の島を旅行中、目の前で信じられないような美しい夕日を見た島の人が、思わず一言「かっ!!」と漏らしました。その人はどんな気持ちだったでしょうか?
- とても感動・驚いている
- とても怒っている
- とてもがっかりしている
正解は「とても感動・驚いている」です。
「かっ!!」は、隠岐地方で使われる感嘆詞で、非常に驚いた時や感動した時に思わず口から出る言葉です。 NHKの朝ドラ『あまちゃん』で有名になった岩手県久慈市の「じぇじぇじぇ」に相当する隠岐の言葉、と考えると分かりやすいかもしれません。隠岐の島を訪れた際は、ぜひこの言葉を使ってみてください。「隠岐の島で使える挨拶や面白い方言をもっと知りたい方はこちら」
よくある質問
Q. 島根の方言で「ありがとう」ってなんて言うの?
A. 島根県、特に東部の出雲地方では「だんだん」と言います。これは単なる「ありがとう」だけでなく、「いつもいつも、重ね重ねありがとう」という深い感謝の気持ちを表す温かい言葉です。
Q. 島根の方言が東北のズーズー弁に似ているのはなぜ?
A. なぜ出雲弁が東北弁に似ているのか、はっきりした理由はまだ解明されていません。昔の言葉が都から遠い出雲と東北に残ったという説や、古代の人の移動が関係しているという説など、様々な説があります。
Q. 島根県の方言は全部同じじゃないの?
A. 全く違います。島根県の方言は、大きく分けて東部の「出雲弁」、西部の「石見弁」、そして離島の「隠岐弁」の3つに分かれます。 発音や単語、文法もそれぞれ異なり、非常に多様性に富んでいます。
総括・まとめ
全問正解できたでしょうか?中にはかなりの難問もあったかと思います。 今回ご紹介したクイズを通して、島根県の方言が単なる「なまり」ではなく、一つ一つに歴史や文化、人々の暮らしぶりが反映された、奥深く面白い言葉の宝庫であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
これらの言葉を知っているだけで、島根県への旅行はもっと楽しく、味わい深いものになるはずです。次に島根を訪れる際は、ぜひ勇気を出して「だんだん」や「まめなかね?」と声をかけてみてください。きっと、最高の笑顔が返ってくることでしょう。