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「たう・たわん」はどこの方言?意味・使い方を広島・山口の資料で解説

「あそこまで手がたう?」「背伸びしてもたわん」——中国地方でこんな会話を聞き、意味が分からなかったことはありませんか?

「たう」は「届く」、「たわん」は「届かない」を表す方言です。広島県や山口県の公的な方言資料に掲載され、手足や道具が目的の場所まで届くかどうかを話す場面で使われています。

ただし、方言は県境できれいに分かれるものではありません。この記事では「広島だけの言葉」と決めつけず、確認できる地域、基本的な使い方、地域による語形の違いを資料に沿って解説します。

30秒でわかる「たう・たわん」の意味

  • たう:届く、ある場所まで達する
  • たわん:届かない
  • 使う場面:手足や棒などが、目的の物・場所まで届くかを話すとき
  • 確認できる地域:広島県、山口県など。地域によって「とう・とわん」という形もある

たとえば、高い棚の箱を取りたいときの「そこ、手がたう?」は、標準語なら「そこ、手が届く?」です。「たわん」は別の単語ではなく、「たう」の否定形として理解すると使い分けやすくなります。

「たう」の意味は「届く・達する」

広島県公式サイトの「広島県の方言」では、「たう」を標準語の「届く」、英語の「reach」に対応する語として紹介しています。福山市が公開する備後福山地方の方言資料では、「(きょりが)届く・達する」と、届く対象が距離であることまで示されています。

つまり、「たう」は気持ちや知らせが届くという抽象的な意味よりも、まず身体や物の先が目的の場所まで物理的に届く場面を思い浮かべると分かりやすい言葉です。

方言 標準語 基本の捉え方
たう 届く・達する 手足や道具が目的の場所まで達する
たわん 届かない 「たう」に否定の「ん」が付いた形

「たわん」は「届かない」

「たわん」は、「たう」の未然形に打ち消しの「ん」が付いた形です。標準語の「買う」が「買わない」となるのと同じように、「たう」は否定すると「たわん」になります。

山口県観光連盟の公式サイトでも、「たう・たわん」は「手が届く・届かない」の意味として対で掲載されています。肯定よりも「手が届かないので取ってほしい」という場面が印象に残りやすいため、「たわん」の形で耳にした人も多いかもしれません。

「たう・たわん」の使い方と例文

使い方の中心は、手足や道具が届くかどうかを確かめる場面です。方言らしい語尾を無理に組み合わせず、「届く」を「たう」に置き換えるだけでも意味は伝わります。

高い場所に手が届くか聞く

例:その棚、手がたう?
標準語:その棚、手が届く?

山口県の公式観光サイトにも「あれ、たう?」という短い問いかけが示されています。相手の身長や立ち位置なら目的の物に届くかを確認する言い方です。

届かないことを伝える

例:背伸びしても手がたわん。
標準語:背伸びしても手が届かない。

否定形は「たわん」です。「たうん」や「たん」とはせず、間に「わ」が入ります。

道具の長さが足りるか話す

例:この棒なら、あそこまでたう。
標準語:この棒なら、あそこまで届く。

萩市立図書館が公開する山口東部方言の資料では、手や足だけでなく道具がある地点まで届く場合にも使うことが説明されています。人の手に限らず、棒や掃除道具などの長さを話す場面でも使えるわけです。

「たう」はどこの方言?

資料で明確に確認できるのは、広島県と山口県です。少なくとも二つの県にまたがって記録されているため、「広島県だけ」「山口県だけ」の方言とは言い切れません。

広島県では県公式資料に掲載

広島県公式サイトは「たう=届く」を主な広島弁の一つとして掲載しています。また、広島県東部の福山市が作成した「備後福山地方の方言」にも、「たう=(距離が)届く・達する」「たわん=(距離が)届かない」とあります。

県東部の備後地方でも確認できるため、少なくとも広島市周辺だけに限られた語ではありません。ただし、同じ県内でも話者の世代、家庭、地域によって使用頻度や発音は変わります。

広島県内の大きな方言区分については、当サイトの安芸弁と備後弁の違いを比較した記事もあわせてご覧ください。

山口県では「とう・とわん」の形も

山口県観光連盟の公式サイトは「たう・たわん」を県外では通じにくい表現として紹介しています。さらに、萩市立図書館の山口東部方言資料では、届く意味の「たう・とう」、届かない意味の「たわん・とわん」が並記されています。

「たう」と「とう」のどちらが聞こえるかは、地域や話者によって異なります。旅行先や会話で自分の知っている形と違っても、すぐに誤りと決めつけないのが大切です。

広島県と山口県の両方で確認できることからも、方言の分布は行政上の県境と一致するとは限りません。この記事では根拠を確認できた広島・山口を中心に扱い、それ以上の広がりは断定しません。

活用すると「とーた・とーて」になる場合がある

山口の方言解説では、「たう」が助動詞「た」や助詞「て」に続くと、「とーた」「とーて」という形になることが紹介されています。

語形 意味
たう/とう 届く ここから手がたう
たわん/とわん 届かない あと少し手がたわん
とーた 届いた ようやく手がとーた
とーて 届いて 後ろの語へ続ける形

ただし、これらの活用形を広島・山口の全域で一様に使うとは限りません。まずは「たう=届く」「たわん=届かない」という基本の対を押さえ、ほかの形は実際の話者や地域資料に合わせて理解するのが安全です。

標準語の「届く」との違い

標準語の「届く」は、手や物が物理的に届く場合だけでなく、「声が届く」「願いが届く」「荷物が届く」など幅広く使えます。

一方、今回確認した方言資料の「たう」は、手足・道具・距離のような物理的な到達を中心に説明されています。広島大学の研究資料でも手・足などに使い、「手紙がたう」とは言わないと報告されています。そのため、標準語の「届く」が使える文をすべて機械的に「たう」へ置き換えられるわけではありません。

初めて使うなら、高い棚、離れた場所、道具の長さなど、物理的な距離が話題の場面に限定すると誤解が少ないでしょう。

広島のアンテナショップ「TAU」の名前の由来

東京・銀座にある「ひろしまブランドショップTAU」の「TAU」は、この方言に由来します。外務省の地方創生支援サイトでは、「届く」を意味する広島の方言「たう」から名付けられ、広島の魅力を全国や世界へ届ける思いが込められていると説明されています。

日常の「手が届く」という意味と、「魅力を届ける」という施設のメッセージを重ねた名前です。短い方言が地域ブランドの名称として使われている、分かりやすい実例といえます。

当サイトでは「たう」のほかにも、県外で通じにくい表現を標準語だと思い込みやすい広島弁7選で紹介しています。

「たう」の語源は?

山口の方言研究家による解説では、「手」の古い形である「た」に、名詞を動詞化する接尾語「ふ」が付いた古語「たふ」から「たう」になった、という考え方が紹介されています。

意味の面では「手が届く」という用法とつながる説明ですが、今回確認した広島県・福山市・山口県観光連盟の公的な一覧は語源まで示していません。したがって、本記事では一つの語源説明として紹介し、確定した語源とは扱いません

よくある質問

「たう」と「たわん」は別々の方言ですか?

別々の意味を持つ独立した語というより、「たう」が肯定の「届く」、「たわん」が否定の「届かない」に当たります。対で覚えると会話を理解しやすくなります。

広島弁ですか、山口弁ですか?

どちらの地域の資料にも掲載されています。広島県公式資料、福山市の備後方言資料、山口県観光連盟の公式サイト、萩市立図書館の山口東部方言資料で確認できます。どちらか一県だけに限定するのは適切ではありません。

今も使われていますか?

現在も自治体・大学・観光関係のページで紹介され、広島大学の学生向けページでも「たう、たわん」が挙げられています。ただし、資料への掲載だけで、すべての住民が日常的に使うとは判断できません。世代、家庭、居住地域による差を前提にしてください。

まとめ

「たう」は「届く・達する」、「たわん」は「届かない」を意味する方言です。高い場所に手が届くか、道具の長さが目的地まで足りるかといった、物理的な距離を話す場面で使われます。

広島県と山口県の公的資料で確認でき、山口東部では「とう・とわん」という語形も記録されています。県境や地域名だけで一つの形に決めつけず、話者による違いを含めて味わいたい言葉です。

参考資料

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