宮崎弁に「日向方言」と「諸県方言」という2つの大きな系統が存在する理由は、江戸時代の「藩」の支配領域が異なっていた歴史的背景にあります。
特に、都城市などを中心とする諸県地方は強大な薩摩藩(現在の鹿児島県)の影響下にあったため、言葉も鹿児島弁に近い「諸県方言」が話されています。
この記事では、なぜ宮崎県内で言葉が違うのか、その歴史的な謎を解き明かし、実際の会話例を通して具体的な違いを分かりやすく解説します。
なぜ宮崎弁は一つじゃない?歴史が作った2つの方言

多くの人が「宮崎弁」と聞いて思い浮かべるのは、実は宮崎県で話される方言の一つの側面に過ぎません。
宮崎県の方言は、驚くほど多様で、その背景には県の複雑な歴史が深く関わっています。
ここでは、宮崎弁の大きな2つの流れと、その成り立ちについて掘り下げていきます。
- 宮崎弁の2大系統「日向方言」と「諸県方言」
- 境界線は江戸時代の「藩」の領地
- 薩摩藩の影響を色濃く受けた「諸県方言」
- 独自の発展を遂げた「日向方言」
- 宮崎弁の基本も押さえよう
- 宮崎弁の「可愛さ」の秘密
- 宮崎出身の有名人と方言
宮崎弁の2大系統「日向方言」と「諸県方言」
宮崎県の方言は、大きく分けて2つの系統に分類されます。
- 日向方言(ひゅうがほうげん):
- 宮崎市や延岡市など、県の大部分で話される方言。大分県寄りの特徴を持つ「豊日方言」に属します。一般的に「宮崎弁」として知られる「てげ」や「〜っちゃが」などは、主にこの日向方言で使われます。
- 諸県方言(もろかたほうげん):
- 都城市、小林市、えびの市など、県南西部の諸県地方で話される方言。鹿児島県寄りの特徴を持つ「薩隅方言」に属し、鹿児島弁と非常に近い特徴を持っています。
境界線は江戸時代の「藩」の領地
この2つの方言の境界線は、驚くべきことに江戸時代の藩の領地区分とほぼ一致しています。
言葉の違いは、かつての文化圏の違いを今に伝える「生きた証」なのです。
薩摩藩の影響を色濃く受けた「諸県方言」
現在の都城市、小林市、えびの市を含む諸県地方は、当時、強大な力を持っていた薩摩藩の支配下にありました。
そのため、この地域で話される諸県方言は、単語や発音、アクセントに至るまで鹿児島弁と極めて近い特徴を持っています。
独自の発展を遂げた「日向方言」
一方、延岡藩、高鍋藩、佐土原藩、飫肥藩などが治めていた他の地域では、薩摩とは異なる文化圏の中で言葉が育まれました。
これが、現在の日向方言の土台となっています。
同じ宮崎県内でも、歴史的な歩みが違ったことで、言葉にも明確な差が生まれたのです。
宮崎弁の基本も押さえよう
地域差を知る前に、まずは宮崎弁の基本的な単語を知っておくと、より理解が深まります。
「てげ(とても)」や「よだきい(面倒くさい)」など、宮崎を代表する言葉に触れてみましょう。
宮崎弁の「可愛さ」の秘密
宮崎弁、特に日向方言が「かわいい」と言われるのには、その独特のイントネーションや語尾に理由があります。
宮崎出身の有名人と方言
宮崎出身の有名人が話す方言も、実は出身地によって異なります。
例えば、都城市出身の温水洋一さんは諸県方言、宮崎市出身の堺雅人さんは日向方言がルーツということになります。
比べてみよう!日向方言 vs 諸県方言

日向方言と諸県方言が、実際の会話でどれほど違うのか。
県庁所在地である宮崎市(日向方言)と、諸県地方の中心都市である都城市(諸県方言)の言葉を、具体的なシーンで比較してみましょう。
その違いにきっと驚くはずです。
- 会話シミュレーション:宮崎市 vs 都城市
- 指示語の違い:「こんげ」と「こげん」
- 「どげんかせんといかん」はどっち?
- 強調表現のユニークな違い
- 告白するならどっちの方言?
- 総括・まとめ
会話シミュレーション:宮崎市 vs 都城市
同じ内容を伝えようとしても、使う言葉が全く異なります。
| シーン | 標準語 | 日向方言(宮崎市周辺) | 諸県方言(都城市周辺) |
|---|---|---|---|
| 挨拶 | 「張さん、いますか?」 | 「張さん、おる?」 | 「張さん、おいやっけ?」 |
| 驚き・感動 | 「わあ、すごく可愛いですね」 | 「わあ、てげかわいいね〜」 | 「わあ、おっじごっむじ〜」 |
| 感心 | 「すごい!ドリブルしたよ」 | 「てげすげー!ドリブルしたじ」 | 「あらもしたん!ドリブルすっとね」 |
| 食事の誘い | 「お昼、どうしますか?」 | 「昼、どんげすっけ?」 | 「ひーめし、どげんすい?」 |
指示語の違い:「こんげ」と「こげん」
「こんな・そんな・あんな・どんな」という指示語(こそあど言葉)にも、明確な違いが現れます。
- 日向方言: こんげ・そんげ・あんげ・どんげ
- 諸県方言: こげん・そげん・あげん・どげん
「どげんかせんといかん」はどっち?
かつて東国原英夫元知事が掲げた有名なスローガン「どげんかせんといかん」。
これは「どうにかしないといけない」という意味ですが、「どげんか」という言葉から、都城市出身である氏のルーツを反映した諸県方言であることがわかります。
日向方言では「どんげかせんといかん」となります。
強調表現のユニークな違い
何かを強く強調する際、諸県方言にはユニークな言い方があります。
例えば「寒い」を強調する場合、鹿児島弁では「さむかぁ」と語尾を伸ばしますが、都城を中心とする諸県方言では「サミモサミ」(寒いにも寒い)のように単語を重ねる独特の表現を使います。
これは諸県方言の際立った特徴の一つです。
告白するならどっちの方言?
どちらの方言にも、気持ちを伝える温かい表現があります。
日向方言なら「好きやっちゃけど」、諸県方言なら鹿児島弁に近い表現で、どちらも心に響く魅力を持っています。
総括・まとめ
この記事では、宮崎弁が「日向方言」と「諸県方言」という2つの系統に分かれている事実と、その歴史的背景について解説しました。
- 宮崎弁の地域差は、江戸時代の藩の支配領域という歴史に起因する。
- 県の大部分は日向方言、都城など県南西部は薩摩藩の影響を受けた諸県方言の文化圏。
- 「てげ(日向)」と「おっじ(諸県)」のように、同じ「とても」でも単語が異なる。
- 「どげんかせんといかん」は諸県方言であり、日向方言では「どんげか〜」となる。
宮崎弁の多様性は、宮崎の豊かな歴史と文化の証です。
もし宮崎を訪れる機会があれば、ぜひ地域の言葉の違いにも耳を傾けてみてください。
言葉の背景を知ることで、その土地への理解がより一層深まるはずです。