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「ものもらい」の方言は?めばちこ・めいぼなど地域差を解説

まぶたが赤く腫れたとき、「ものもらいができた」と言う人もいれば、「めばちこ」「めいぼ」と呼ぶ人もいます。違う病気のように聞こえますが、いずれも麦粒腫など、まぶたのできものを指す地域の呼び名です。

大まかに見ると、東日本では「ものもらい」、近畿中央部では「めばちこ」、京都・滋賀では「めいぼ」が目立ちます。ただし、境界は都道府県とぴったり一致せず、同じ地域でも世代や家庭によって呼び方が異なります。

この記事では、国立国語研究所の『日本言語地図』と、ロート製薬が全国約1万件の回答を集計した「ものもらいMAP」をもとに、代表的な呼び名の分布と語源を整理します。

30秒でわかる|ものもらいの方言と地域

呼び名多く確認される地域
ものもらい東日本を中心に全国
めばちこ大阪府・兵庫県・奈良県など近畿中央部
めいぼ京都府・滋賀県
めんぼ岐阜県・愛知県
めぼ三重県、中国・四国地方の一部
めもらい福井県・石川県、長崎県・大分県の一部
めっぱ北海道
ばか/おひめさん宮城県/熊本県

ここで示したのは、調査で使用が多く確認された地域の目安です。「その県では全員がこの呼び名を使う」という一覧ではありません。隣接地域から言葉が広がることもあれば、共通語の「ものもらい」を併用する人もいます。

全国では「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」が上位

ロート製薬の「ものもらいMAP」は、同社の会員を対象に集めた全国約1万件のアンケートを集計したものです。全年齢・男女の集計では、「ものもらい」34%、「めばちこ」27%、「めいぼ」7%が上位3つに入っています。

ただし、この調査結果は2004年に公開されたもので、無作為抽出による2026年現在の使用率ではありません。割合は最新ランキングとしてではなく、当時の回答者にどの呼び名が多く、どのような地域差が見えたかを知る資料として読むのが適切です。

さらに古い分布は、国立国語研究所の『日本言語地図』第112図「ものもらい(麦粒腫)」で確認できます。この全国調査は1957年から1965年に行われ、主な話者は1903年以前に生まれた各地生え抜きの人々でした。現在の若い世代の話し方をそのまま示す地図ではありませんが、地域語が共通語化以前にどのように分布していたかを知る基礎資料です。

地域別に見る代表的な呼び方

東日本を中心に「ものもらい」

共通語として広く通じる「ものもらい」は、ロート製薬の調査では東日本を中心に多く確認されています。同資料は、テレビや新聞・雑誌などを通じた共通語化により、古い全国調査より使用地域が広がったと分析しています。

東日本にも地域語があります。代表例は北海道の「めっぱ」と宮城県の「ばか」です。「ものもらい」が優勢な地域だからといって、呼び名が一種類だけとは限りません。

近畿中央部は「めばちこ」

「めばちこ」は、大阪府・兵庫県・奈良県など近畿中央部で目立つ呼び名です。ロート製薬の解説では、京都府・滋賀県を除く近畿地方で、高年層から若年層まで多く使われていました。

同じ調査では、周辺の京都府の若年層や岡山県にも「めばちこ」の広がりが見られます。「関西なら必ずめばちこ」と区切るのではなく、中心地域から隣接地域へ広がる語形として見ると実態に近づきます。

京都・滋賀は「めいぼ」、東海や中国・四国では形が変化

近畿でも京都府・滋賀県では「めいぼ」が多く確認されています。ロート製薬の方言解説は、「目」と「いぼ」からできた語と考えられる「めいぼ」が地伝いに広がる過程で、岐阜県・愛知県の「めんぼ」、三重県や広島県・香川県などの「めぼ」が生まれたと説明しています。

めいぼ、めんぼ、めぼは音が少しずつ異なります。地図で見ると、無関係な呼び名が点在しているのではなく、隣り合う地域で語形が連続的に変わる方言らしい分布が見えてきます。

離れた地域に現れる「めもらい」

「めもらい」は、北陸の福井県・石川県と、九州の長崎県・大分県の一部で確認されています。二つの地域は離れているため、ロート製薬の解説は、一方から他方へ直接伝わったのではなく、それぞれの地域で独自に生まれた形とみています。

宮城の「ばか」と熊本の「おひめさん」

宮城県の「ばか」と熊本県の「おひめさん」は、響きの印象が正反対です。調査の方言解説では、病気の名をあえて乱暴に、または丁寧に呼ぶことで、自分から遠ざけたい対象として表現したものと説明されています。

熊本の方言をさらに知りたい方は、当サイトの意味を勘違いしやすい熊本弁クイズでも「おひめさん」を確認できます。

「ものもらい」という名前は人からうつる意味ではない

「ものもらい」という語から、人から病気をもらう、つまり感染するという意味を連想するかもしれません。しかし、名称の由来として資料が紹介しているのは別の考え方です。

国立国会図書館のレファレンス協同データベースに掲載された調査事例では、「よその家から物をもらうと眼病が治る」という俗信と結びついて生まれた名称が紹介されています。ロート製薬の方言解説も、東日本や岐阜に残る「物をもらうと治る」という言い伝えと、ものもらい・めこじき・めぼいとなどの呼び名を関連づけています。

一方、辞書資料には「目の周り」を表す語から生まれたとする語源説もあります。したがって、「ものもらい」の語源を一つに確定することはできません。俗信に由来する説が広く紹介されているものの、別説があることも押さえておきましょう。

昔の地図と2004年調査で分布が違う理由

国立国語研究所の調査とロート製薬の調査には、およそ半世紀の隔たりがあります。調査対象や方法も異なるため、割合を直接比べることはできません。

分布変化の評価も一つではありません。ロート製薬の専門家解説は、メディアを通じた共通語化によって「ものもらい」の使用地域が広がったと分析しています。一方、国立国語研究所が紹介した2015年の研究発表では、新しい全国方言分布調査を『日本言語地図』と比較し、「半世紀の変化はさほど大きくない」と報告しています。

二つの見解は、調査時期だけでなく、対象者の集め方や地図化の方法も異なります。そのため、「全国で地域語が急速に消えた」「分布はまったく変わっていない」のどちらかに決めつけず、共通語化と地域語の維持が同時に起きている可能性を考えるのが安全です。

  • 国立国語研究所:1957〜1965年、全国約2400地点を調査
  • ロート製薬:会員アンケート約1万件を集計し、2004年に公開
  • 共通点:県境では割り切れない多様な呼び名を確認できる

国立国語研究所は、古い調査をもとに作ったデジタルマップへ利用者が自分の知る呼び名を書き込む試みも行いました。方言地図は固定された「正解」ではなく、言葉の変化を時系列で考える手がかりになります。

病院では方言と症状を分けて伝えると確実

「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」は、日常語ではまぶたのできものを広く指すことがあります。日本眼科学会は「ものもらい、めばちこ、めいぼ」を霰粒腫の俗称としても紹介しており、東京医科大学病院は、ものもらい・めばちこと呼ばれる麦粒腫と、細菌感染を伴わない霰粒腫を区別しています。

呼び名だけで病名を自己判断せず、受診時には「いつから」「痛みや赤みがあるか」「しこりを感じるか」など、実際の症状も伝えると確実です。この記事は呼び名の地域差を扱うもので、診断や治療方法を示すものではありません。

よくある質問

「めばちこ」はどこの方言ですか?

大阪府・兵庫県・奈良県など、近畿中央部で多く確認される呼び名です。ただし京都府・滋賀県では「めいぼ」が目立ち、岡山県など周辺地域にも「めばちこ」が広がっています。

「めいぼ」と「めぼ」は同じ意味ですか?

どちらも、ものもらいに当たる地域の呼び名です。「めいぼ」は京都府・滋賀県、「めぼ」は三重県や中国・四国地方の一部で多く確認されます。調査の方言解説では、同じ系統で音の形が変化した語と考えられています。

全国で一番多い呼び名は何ですか?

ロート製薬が約1万件を集計した調査では、「ものもらい」が34%で1位でした。ただし2004年公開の会員アンケートであり、現在の全人口を代表する最新統計ではありません。

「ものもらい」と言えば全国で通じますか?

共通語として広く知られていますが、近畿や中国・四国地方では地域語の使用が強く残るという調査結果があります。相手が分からない場合は、「まぶたにできる腫れ」など、症状を添えて言い換えると伝わりやすくなります。

まとめ|ものもらいの呼び名は県境を越えて変化する

ものもらいの呼び名は、東日本の「ものもらい」、近畿中央部の「めばちこ」、京都・滋賀の「めいぼ」が代表的です。ほかにも、めんぼ、めぼ、めもらい、めっぱ、ばか、おひめさんなど、多様な言葉があります。

分布は都道府県ごとに一種類へ決まるものではありません。調査年代、地域、世代、家庭によって答えは変わります。自分にとって当たり前の呼び名が、別の土地では方言だったと気づけるところに、このテーマの面白さがあります。

方言は地域・世代・家庭・場面によって使い方が異なります。本記事の地域区分と割合は、各資料で確認できる傾向を示したもので、すべての話者の用法を一律に示すものではありません。

主な参考資料

-方言コラム
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