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「片付ける」の方言は?かたす・なおすの意味と地域差

「食器をかたしておいて」「その本、棚になおして」。住んでいる地域が違う人からこう言われると、食器をどこかへ分けるのか、本を修理するのかと迷うかもしれません。

先に結論を言うと、「かたす」も「なおす」も、地域によっては「片付ける」「しまう」という意味で使われます。「かたす」は関東地方を代表する言い方です。「なおす」は近畿、山口、九州、沖縄などで確認され、物を元の場所へ入れる場面でも使われます。

ただし、方言の境界は県境と同じではなく、同じ地域でも年代、家庭、場面によって使い方が異なります。この記事では公的・研究資料で確認できる範囲をもとに、二つの言葉の地域差と、会話で迷わないための見分け方を整理します。

30秒でわかる「かたす」と「なおす」の違い

言い方中心的な意味資料で確認できる地域誤解しやすい点
かたす片付ける関東地方話者には共通語のように感じられることがある
なおす片付ける、しまう、元の場所へ入れる近畿、山口、九州、沖縄など共通語の「修理する」と同じ形
片付ける物をまとめて整える、適切な場所へ納める広く通じる言い方「仕事を片付ける」など別の意味もある
しまう使った物などを場所や入れ物に納める広く通じる言い方補助動詞の「~てしまう」とは用法が違う

この表は、各地域の言い方を一つに決めるものではありません。たとえば「なおす」が使われる地域でも「片付ける」「しまう」を併用する人がいます。反対に、首都圏で広く使われる「かたす」を地域語だと意識していない人もいます。

「かたす」は関東で使われる「片付ける」

国立国語研究所は「カタス」を、関東地方を代表する方言形の一つとして紹介しています。「食器をかたす」「机の上をかたす」と言えば、食器や机の上の物を片付けるという意味です。

同研究所の2018年度版「首都圏大学生の言語使用と言語意識の地域差に関する調査」では、「かたす」を「言う」と答えた人が2,129人、75.9%でした。この項目の回答者は2,806人です。関東内の集計でも、調査したすべての地域に使用者が確認されています。

この75.9%は、日本人全体の使用率ではありません。 調査は東京都・埼玉県・神奈川県に立地する大学・高専の学生を対象に行われ、地図は回答者の言語形成期の居住地をもとに作られています。「若い世代の首都圏言語を知る資料」として読む必要があります。

「かたす」の短い例文

言い方標準語での意味想定される場面
食べ終わったら、お皿をかたして食べ終わったら、お皿を片付けて家庭で食事を終えたとき
机の上、先にかたしておくね机の上を先に片付けておくね作業場所を空けるとき
この荷物を端にかたそうこの荷物を端に片付けよう通り道を空けるとき

2018年度調査では、「かたす」がどのくらい改まった言い方かも7段階で尋ねています。「くだけた言い方」に近い1と2を選んだ回答は、合わせて70.8%でした。親しい会話では自然でも、地域の異なる人が集まる職場や案内文では「片付ける」「しまう」と言い換える方が確実です。

「なおす」は近畿から九州などで「しまう」の意味

「なおす」は、共通語では壊れた物を修理する意味でよく使います。しかし、地域によっては「物をしまう」「元の場所へ片付ける」という意味にもなります。

萩市立図書館が公開する山口東部方言の資料は、片付ける意味の「なおす」が主に九州、山口、沖縄、近畿で使われると説明しています。地域の具体例も複数の資料で確認できます。

  • 国立国語研究所の「北九州市小倉北区方言地図」には、「なおす」を「片付ける」「しまう」の意味で使うかを調べた地図がある
  • 長崎市の地域情報ページは、「なおす」を「入れる。片付ける」と説明している
  • 鹿児島市の移住案内は、若者でも使う鹿児島弁の例として「なおす→片付ける」を挙げている
  • 山口東部方言の資料は、「なおす」を「片付ける・仕舞う」と記録している

これらは「挙げた地域の全員が使う」「この地域だけで使う」という意味ではありません。方言の分布は連続しており、人の移動によって別の地域でも使われます。

「なおす」の短い例文

言い方標準語での意味判断の手がかり
読んだ本は棚になおして読んだ本は棚にしまって収納場所の「棚」が示されている
使った道具をなおしておいて使った道具を片付けておいて使用後なので収納の意味が自然
壊れた時計をなおして壊れた時計を修理して「壊れた」が修理の意味を示す

「このおもちゃ、なおして」のように、目的語だけでは意味が二つに分かれる場合があります。遊び終わった場面なら「しまって」、故障の話をしているなら「修理して」と考えられます。判断できないときは、「箱にしまうという意味ですか」と確認すれば行き違いを防げます。

福岡で気づかず使いやすい生活語は、標準語だと思われがちな福岡の方言でも紹介しています。

「かたす」と「なおす」は同じ意味?

物を整理したり所定の場所へ移したりする場面では、どちらも「片付ける」と言い換えられます。ただし、二つの言葉が使われる地域は異なり、話者が感じる使用範囲も完全には同じではありません。

比較点かたすなおす
中心となる言い換え片付ける片付ける、しまう、入れる
地域の目安関東近畿、山口、九州、沖縄など
誤解の原因地域語だと気づきにくい「修理する」の意味と重なる
広い相手に伝える表現片付ける片付ける、棚などにしまう

国語辞典で「片付ける」は、乱雑な物をまとめ整えることと、適切な場所へ入れ納めることの両方を含みます。そのため、「かたす」「なおす」を一律に別の標準語へ置き換えるより、何をどこへ動かす場面なのかを見る方が意味をつかみやすくなります。

なぜ方言だと気づきにくいのか

「かたす」は首都圏でも使用者が多く、テレビや学校、職場で耳にする機会があります。「なおす」は全国で使われる「修理する」の意味と形が同じです。どちらも聞き慣れない音ではないため、話し手が地域差に気づきにくい言葉です。

国立国語研究所は、東京にも地域特有の言葉があり、首都圏で使われる「カタス」をその例に挙げています。方言は特徴の強い語尾や発音だけではありません。日常の片付け、食事、学校などで無意識に使う生活語にも地域差があります。

ほかにも「標準語だと思っていた」という驚きが起こりやすい言葉は、実は方言だった言葉の一覧で確認できます。

職場や引っ越し先で誤解を防ぐ言い換え

方言を避ける必要はありませんが、相手が意味を知らない可能性がある場面では、動作と場所を具体的にすると伝わりやすくなります。

  • 「資料をかたしてください」→「資料をまとめて棚に戻してください」
  • 「道具をなおしてください」→「道具を元の箱にしまってください」
  • 「これ、なおしておいて」→「これは修理してください」または「これは引き出しにしまってください」

意味を尋ねる側も、「その言い方は間違い」と決めつける必要はありません。「ここでは片付けるという意味なんですね」と確認すれば、作業を止めずに地域差も理解できます。

家事に関する地域語では、「捨てる」も「なげる」「ほかす」「ほる」など多くの形があります。片付けた後の動作まで知りたい方は、「捨てる」を表す方言の地域差もあわせてご覧ください。

よくある疑問

「かたす」は標準語ではないのですか?

国立国語研究所は、「かたす」を関東地方の代表的な方言形として扱っています。首都圏の若い世代にも使用者が多いため、共通語のように感じられることがありますが、地域差のある言い方です。

片付ける意味の「なおす」は、どこの方言ですか?

資料では、近畿、山口、九州、沖縄などで使われると説明されています。この記事では北九州、長崎、鹿児島、山口東部の具体例も確認しました。ただし、同じ府県内でも使う人と使わない人がいます。

「しまう」も方言ですか?

物を決まった場所へ納める意味の「しまう」は、国語辞典にも載る広く通じる言い方です。ただし、「片付ける」「しまう」「なおす」のどれを日常的に選ぶかには地域差があります。

方言の「なおす」は漢字で「直す」と書きますか?

資料では「なおす」と仮名で示されることが多く、漢字だけでは「修理する」との違いが伝わりません。地域語を解説するときや、地域の異なる相手へ書くときは、仮名にして「片付ける・しまうの意味」と補うのが分かりやすいでしょう。

まとめ

  • 「かたす」は「片付ける」を表す関東地方の代表的な方言
  • 「なおす」は近畿、山口、九州、沖縄などで「片付ける・しまう」の意味になる
  • 「なおす」は共通語の「修理する」と同じ形なので、前後の状況で判断する
  • 同じ地域でも年代、家庭、場面によって使い方は異なる
  • 広い地域の相手には「片付ける」「棚にしまう」のように具体的に伝えると誤解が少ない

「かたす」も「なおす」も、毎日の暮らしに深く根づいた言葉です。どちらが正しいかを決めるのではなく、誰がどこで、どんな場面に使うのかを見ると、何気ない片付けの一言にも地域のことばの違いが見えてきます。

参考資料

-方言コラム